ソラナミダ

「…ハイ!」


私は……
私達は…


大人だ。



何事もなかったかのように、けれどもちょっぴり白々しく……



振り返る。



その相手は紛れも無く久住博信であることは百も承知で、満面の笑顔を作る。



「聞いた?三ツ葉保険。」


「…はい。」


「3時には全スタッフ揃うから。集まり次第ミーティング始められるように会場準備お願い。あと…、資料によく目を通しておいて。」


「…ハイ。」


「…久々に仕事一緒だな。」


「…あ、ハイ…。」



喜んでいるのかも全く読みとれない表情で……


彼はポツリと呟いた。



私も負けじとポーカーフェイスを貫く。



「…頑張ろう。」



「…ハイ、頑張りましょう。」



事務的な会話の中にも温さを帯びる言葉……。



『頑張ろう』…か……。







彼の面影を見るように……


私はそっと彼の消えたそのドアの先を……見つめた。




「…さて…と。」


3時からはミーティング。


夜は飲み。



まだまだすることは山積み!



「…どれっ、やりますかぁ……。」




立ち止まってはいられない現実。



こうしてまた…


一日が過ぎようとしていた。