通路を一気に駆け抜け、
私が住む4階にエレベーターが到着するのをひたすら待つ。
ここでも私は…
自分を急かす。
携帯を開いて時間を確認。
数秒が長く感じるのを…
地団駄踏んで、ごまかす。
「………ん?」
足の下に、違和感。
非・日常の出来事だった。
恐る恐るそこに目をやると…、
「………?」
下敷きになっていたのは…
「…指輪…?」
少し黒ずんだ、指輪のようなものが…チェーンの先に付けられて、横たわっていた。
私はそれを拾いあげると、まじまじと見つめた。
誰かの…
落とし物?
…と、同時に……
エレベーターが到着した。
「………やば。」
慌てた私は……
それをちょっぴりきつめのパンツのポケットに押し込んだ。
エレベーターの中で、ポケットからそれを取り出すと…
上に掲げて、指輪に刻まれたその文字を確認する。
「………?」
無情にも…、
1階に到着。
エントランスを歩きながら、ひんやりと冷たい【ソレ】を…
再びポケットにしまいこんだ。
管理人さんは…いない。
仕方がないと、私は玄関を出て…
もう一方のポケットに手をやる。
「……あれ。……ない。」
またまた非・日常な出来事…。
いつもポケットに入れるはずの自転車の鍵が…
ない!
鞄の中を漁り、ジャケットのポケットを手探りし……
蒼白する。
「………忘れた?」


