晴海くんの手が止まる。
ゆっくりと瞳を開けると。
彼が、ふわりと…笑う。
「…………。」
不思議だった。
目の前で、映像を見ている…感覚。
やわらかい表情で、彼は時折瞼を伏せながら……
真剣に、向き合っている。
それは、とても綺麗で……
思わず見とれてしまうくらいであった。
「このCM、わこが作ったんだって?」
「私っていうより…みんなで…かな。久住の……最後の仕事なの。」
「ふーん…、そっか。妬けるな。」
「……え?」
「俺、このCM…、好き。」
彼の指が、私の瞼にふれる。
これは……、アイラインの合図。
私はまた……、映像の世界へと飛び込む。
長い時間……、
けれど、それは本当にあっと言う間で……。
「できたよ。」
彼が背後から囁きかけるその言葉で。
夢から……覚める。
私は……立ち上がる。
晴海くんの手が、ポンっと背中を押して。
勢いで、一歩前に…踏み出した所で。
「……リハ…、おしまい。」
現実世界を……
目の当たりにする。
大勢のスタッフ。
……木村さん。
沢山の視線が……
私たちに注がれていた。
「…………。」
晴海くんは………?
後ろを振り返ると。
そこには、穏やかに微笑む…彼がいる。
のばした彼の指先が…、私の唇に……触れる。
ゆっくりと、形をなぞって………。
「…………。」
待って、
これは………。
考えるよりも先に……。
晴海くんの唇が、私の唇に……触れる。
キスの………
サイン。


