「お前がしていたことは…こういうことなんだよ。お前が俺を信じきれなかったのと同じで…、俺も疑ってばかりだった。お前にも佐倉にも、ひどいことをしていた。」
「それは、私の方で……」
「……うん。だから…、おあいこ。終わったことだから…もう全て水に流して欲しい。単純に、わこに必要だったのは…俺じゃなかった。それだけのことだ。」
「………博信……。」
「しかし、まあ…、驚かされたよ。」
「…………?」
「ご近所トラブルを起こしていたのが…、宇野晴海だったとはね。しかも、トラブルメーカーは菱沼いちかってとこか?ピンと来たよ。少し前の騒ぎで……。」
「…………。」
「彼が…、好きなんだろう?」
「………はい。」
「どう考えても…、思いを貫くには、障害は大きいけどな。」
「…………。でも、好きなんです。」
「………。そっか。そうまで言わせてしまう奴の魅力って…、何なんだろうな?……て、世の中の女性には皆わかることか。」
「……はい。でも……、きっと、私しか知りません。」
「…………。」
「………そう…、信じたいんです。」
「………そっか。……………そっか………。」
博信は、大きなその手で。
ポンポンっと……
頭に触れる。
「仕方ねーよなあ…。」
小さく呟いた彼の顔を…、
私は、見ることができなかった。
自信家で、いつも力強く撫でてくれた彼の手が……
僅かに…
震えていたから。
いつも、
全身全霊で…
愛をくれた、博信が…。
初めて見せた、涙だった………。


