「あいつが…一番戸惑ってるのかもな。こんなかとになろうだなんて…予想しなかったんだろう。それは…、俺も然り。だから、なあ…、平瀬。気づかせてやってよ。お前のその愛情を…ぶつけてやって。」
「…………!」
「馬鹿な兄貴かもしれないけど…、やっぱ弟分が心配な訳だ。世間まで巻き込んだアホな弟だけど、きっと誰よりも…愛されたい男なんだ。お前はホラ…、逆だろう?愛されるよりも愛したい。…相性バッチリ。」
「…もう…、やめろとは、言わないんですね。」
「想像以上にお前はタフだからな。事実を知ったら…傷つくと思った。なのに…、逆効果だとはな。あいつも混乱する訳だ。」
「……母譲りです。」
「じゃあ…、ますます。ぶちかましてやれ。」
「……ハイ!あ……、だけど……。晴海くん、家を出て行って、どこにいるのか……。」
「……ここまで話して…、お前の頭はからっぽかのか!」
「……エっ……。」
「あいつに…頼る先があるか?」
「……………。」
「俺が、可愛い弟を放っておくと思うのか!」
「……え…、……え?!」
「ネタバレして平瀬がキレるかもしれんからな。多分、二人共逃げ場がなくなる。そーなる前に、と…あらかじめ手を打っておいた。」
「………と、いいますと……?」
「…ほら、これを持っておけ。」
「…………?!」
手渡されたのは……、
「……鍵…?」
「俺ん家の合い鍵だ。何が悲しゅうてお前にわたさなきゃいけないのかわからんが…、逃げた妻が使っていたものだ。」
「……!」
「俺も…、人のこと言えた口じゃねェのになあ……。どうにも俺の場合にはみんな重く捉えないが…。」
「……そんなんだからですよ。」
「……まあ、お前と晴海の母親とは重みが違うか。」
「………木村さん…。」
「ん~?」
「母は…、晴海くんのこと、忘れては…いませんでした。」
「うん……。」
「身を持って…、それを、伝えたいんです。」
「待て!人ん家でナニするつもりだ…!」
「しません!それに……、ありがたいんですが、この鍵は…お返しします。」
「………。何で?」


