「………すごい…ですね。」
「志が高かったからな。本当の母親に会ってみたい。会ってどうするのかは全く見当はつかなかったけど…、純粋に活躍するのは嬉しかったし、応援していた。」
「…………。」
「あとは…、叔父が亡くなって、晴海には叔父の結婚相手の母親しかいなくなって……。今でも彼女とは仲良くしてはいるようだが…色々気を遣っていたんだろうな。ある程度の稼ぎもあったし…晴海は、すぐに自立した。」
「…………。」
「それが……、まさか、だよな。こんな形で知り合うことになろうとは…奴も思わなかっただろう。」
「私の…ことですか?」
「……ああ。」
木村さんは、テーブルに手をついて。
じっと…私を見つめた。
「…お前が入社試験で合格した時に…、部長から履歴書を預かって。ひと通り…目を通したんだ。珍しい名前ではないけれど、同居家族の欄に『宇多子』の名があった時には…驚いた。まさかとは思ったけど、核心はない。だから、晴海には…黙っていた。」
「………。」
「だけど…、一度だけ、母親がここに来たことがあっただろう?」
「……?そう…でしたか?」
「入社当時は金がないからって弁当持って来ていたのを覚えてるか?」
「…!ああ…!」
「それを忘れて来て…、会社の外までわざわざ届けて来たことがあったじゃないか。」
「……そういえば…。」


