「あいつには、大切にしてるもんがあって…。家族写真と、母親が置いていった…指輪。」
「…………!」
「叔父の手前、決して寂しいとはいわなかったけど…。余りにも、大事にしてるからさ。俺もまだガキで…馬鹿だったから、言っちまったんだよ。」
「……なんて?」
「大きくなったら、探して…会いに行けばいいって。」
「…………。」
「しっかりしている子供だったから、母親の名前だって覚えていたよ。まあ…、それに、たまたま引き取った相手が同じ苗字だったからな。つまりは……、母親のフルネームを、忘れなくて…済んだ。…『木村宇多子』。俺も…、それをずっと覚えていたよ。」
木村……宇多子。
イニシャルは…
『U K』……。
「………。あれ?でも、本名は『晴見』って…。」
「ああ、そうだ。…、これがまた、結婚したんだよ、突然。叔父の結婚相手っつーのが一人娘で…。一応婿っていう立場だったから、苗字も変わった。晴海が来て…、家庭っていうものを考え始めたんだろうな。ホント、自由人だよ。」
「……家系ですか?」
「コラ。俺を見るな、阿呆。でも…人よりちょっと有名になれば見つけやすくなるぞって…、馬鹿なアドバイスをしたのも俺だった。そしたらさ…、あいつソッコー叔父に言ったらしい。『テレビに出る人になりたい』って。可愛い息子のお願いだから…あっさりとことは進んで、劇団に…入団。『晴見』の姓が芸名に変化したっつー訳。それからはお前も知ってるように……トントンと上手いこといってしまった。」


