『恋仲ということもあるようなんですが…、それ以前に、彼らは旧知の仲で。同じ町の、同じ児童養護施設で一緒に生活していた期間があると…書かれています。』




「……?児童養護施設……?」





『菱沼さんの方は、ご両親を亡くしていることをご本人がお話していたのでご存知の方も多いかと思うのですが…、一方の宇野さん。彼はプロフィールの公開をほとんどしていなかったんです。それが、今回の取材でその生い立ちが明るみになってしまったんです。実は彼のご両親は幼い頃に離婚していて……、その後、晴海さんを引き取った父親が失踪しているという衝撃の事実が………』








テレビの画面から……



目が離せなくなっていた。




母親はいない、と……



以前、彼はそう言っていた。







いちかさんと…同じ場所で…………?





「……………。」




テレビの音声は…既に、耳には入って来なくなっていた。




いちかさんは……彼だけを信じていた。


あの時、この家で……



話していたこと。




あれは、全部きっと事実で……



彼に、SOSをしていた……?








「……それなのに…、私は……何を…?」





後ろめたい気持ちよりも、自分の気持ちを…優先させていた。



あの時、説得しなくちゃいけなかったのは…、晴海くんの方だった……?




彼女を突き離すかのような発言もしていた。


でもそれは……、



私には立ち入ることのできない、深い事情が存在していたに…違いない。






「……責められて…当然だ。」




入りこんでは……いけなかった。




晴海くんもわかっているから……




私との関係を、あやふやなままに…していたのだろうか。