着いた所は……
街から外れた、温泉地。
日付も変わり、
ましてや…、深夜。
外には、人っ子ひとりとして…いない。
少ない街灯。そのちょうど真下に……
タクシーは、止まった。
メーターを見ると…、凄い金額が、表示されている。
タクシーのドアが…開く。
「……あの…、今更なんですけど、持ち合わせが足りない…、です。近くにコンビニありますか?そこでおろすので、そこまで……」
…と、言いかけた所で。
「おっちゃん、ありがと。…これで。」
ドアからひょっこりと顔を出した晴海くんが…
運転手さんに、お金を支払う。
……が、
「いやあ~、いい仕事した!ここはおっちゃんの奢りだから…、どうぞゆっくりしてください。」
おじさんは、それを晴海くんの手に握らせて……、
「次の仕事あるからおねーさんも早く降りて!」
私に、そう促す。
「ありがとうございます!」
晴海くんが…、私の腕を掴む。
ドアが閉まって、
クラクションの音と共に……
タクシーが走り去って行く。
「……………。」
呆気に取られる私に…、
晴海くんは、にこりと笑って、
「…来ないかとおもった。」
そう…、小さく呟いた。
夏の夜空には……
満天の星。
マンションの中庭から見る景色とは……
全然違う。
どこまでも、どこまでも……
空が、広がっている。
「……少し……、歩こうか。」
晴海くんは、私の手をとって…
歩き出す。
「…………。……いちかの件では…、色々、ごめんね。」
「……ううん。報道見たけど…いちかさん、大丈夫?」
「今は…、だいぶ落ち着いてる。」
「そっか……。」
今…、晴海くんの側にいるのは私なのに。
なのに……、いちかさんの話題。
私は思わず……、彼の手を離す。
「何で離すの?」
不満そうな顔つきで…、
彼は、手をのばす。
「……じゃあ反対に…、なんで繋ぐの?」


