デスクへ戻ると、まるで腫れ物を扱うかのように…
しばらく、誰ひとりと話し掛けてくる者はなかった。
ただ、ひとりを除いては…。
「……すみません、これに目を通して頂けますか。」
……都築くんだった。
「……何をやらかしたんスか?」
こうも悪気なく聞かれることが…気を遣わせているようで、かえって申し訳なかった。
「…ごめん、迷惑かけて。」
「………。いや、別に俺らになんの被害もないのに……?むしろ、平瀬さん一人が傷ついただけでしょ?」
「…………。当然の…報いなのかもね。」
「……。オンナの嫉妬と恨みですね。クビにしろだなんて、随分粘着質にも感じるけど…相手の見当はつくんスか?」
「………。」
「仕返ししてやりません?」
「……!しないよ。できるはずない。」
「……冗談ですよ。でも…こんなんで駄目になんないで下さいよ?平瀬さんは、俺の目標なんです。ずっと先を走っていてもらわないと…モチベーションがあがんないんスよ。いい仕事して、相手がぐうの音もできないように見せつけてやることが仕返しになると思いませんか?」
「…………。」
「……タナウチ製紙のCM。そのコンテを見せた時……バッサリ言われたんです。平瀬さんの影響が強すぎるって。それだけ俺は感化されてたんだなあって思いました。だから……、何度も描き直しました。自分だけの作品になるように、何度も何度も……。それで出来上がったのが、今渡したソレです。」
「…………。」
「………今度は俺も、同じ舞台に立ちたいです。」
「でも、今回私は……」
「…わかってます。ただ…平瀬さんの力が必要なんです。」
「………!」
「……少なくても俺には必要なんです。」
「……都築くん…。」
「……さあ、仕事しましょう。立ち止まってたら相手の思うツボっスよ。」
「……うん。」
奈落の底に、唯一の希望の光を見た気がした。
都築くんの絵コンテには、彼らしいユニークさと、温かい人間性が顕著に表れていて……
じんわりと心に染みてきた。
それだけ、良い作品だった。
私が忘れかけていた情熱が……そこにはあった。


