「この仕事に必要なものはなんだ?CM一本作るのに、どれだけ沢山の人間が関わってくるのかは解っているはずだ。クライアントを満足させるために、各部署の人間が力を合わせて…、案を練る。相談を重ねる。作り上げる。それでもまだ…終わらない。世に出て初めて、人の目に晒されて、それから初めて…評価が下る。認められるか否かは…それからだ。つまりは、絶対に無くてはならない条件が出てくる。」
「…………。」
「…作り手の情熱と、絶対的な…信頼だ。」
「…………。」
「信頼を得るは…容易なことではない。時間をかけて、ゆっくりと…積み重ねていくものだろう?けど、その積み上げたものを崩すのは簡単だ。一瞬の、些細なことで…長年の苦が水の泡となる。……平瀬、少なくてもお前は今……誰からかの信頼を損ねた。それが、ここに波紋を…呼んだ。悔しいのなら、はい上がって来い。例えゼロになろうと…、お前の居場所はここにある。逃げることは許されない。」
逃げることは………
できない。
突き刺さる冷たい視線。
何がどう違うとか、
誤解だとか、
弁解する余地もない。
白黒つけるなら……
完全なる黒。
そして、
それを確実に知る者が……
私を裁こうとする者が……
何処かにいる。
その時だった。
木村さんが取り残した最後の一枚。その用紙を……
ふわりといとも簡単に拾い上げて。
私の目の前に……
それが掲げられた。
「……忠告したのに。」
背筋に……
冷たいものが走った。
彼女は、私の胸にそれを押し付けて……
「わこ。…皮肉だね。」
……失笑する。
「……美…帆?」
美帆。
どうして……アナタまで……?
「…佐倉、…やめろよ。」
彼女の背後から、その行為を咎めるかのように……
博信が、肩を掴む。
「…久住さん。私達も人のことは…言えないわね。」
美帆の言葉に。
今度は彼の顔が……一気に強張る。


