社員証を翳して、
目の前の自動ドアが……
開く。
………と。
一斉に、社員たちの視線が……こちらへと注がれた。
「……え?」
女子社員の中には、声を潜ませ……
耳打ちし合う者もいる。
決して良い注目を浴びている訳ではない、ということが……
ひしひしと伝わってきた。
「……平瀬。…ちょっと。」
一番奥のデスクから、木村さんが…手招きする。
私は「おはようございます」と、小さく挨拶しながら……その道のりを、歩いた。
みんな……気のない挨拶を返すばかり。
「……おはようございます。木村さん、あの……、何かあったんですか?」
早く不安を払拭したくて、急かすかのようにして…問い掛けた。
「……。今朝…、こんなFAXが流れてきた。」
「……?はい?」
木村さんが一枚の用紙を…
私に手渡す。
「……なに…これ…?」
「……。同じような内容のものが、既に10件以上来ている。」
「…………。」
「……お前、心当たりはあるか?」
「………あ…の……」
用紙に書かれた内容。
それは……
『平瀬わこは人の男に手を出す最悪の女』
「他のも…見るか?」
更に数枚の用紙が……手渡される。
『平瀬わこは裏切り者』
『平瀬わこをクビに』
「……なに…これ…?」
自分の手が……
小さく震えていた。
「木村さん、またです!」
デスクの電話を片手に持ちながら……
都築くんが、流れ出てくるFAX用紙を…指さした。


