チラチラと降る……
粉雪。
街路樹に燈されたいくつもの光。
幻想的な…その世界で。
あの時
私は……
ただ、立ち尽くしていた。
視線の先には…
人だかり。
「……お父さん?」
返って来ない返事。
「お母さん…?」
どこにも見えない…その姿。
「…誰か!救急車を…!」
陽気なクリスマスソングに乗せて、
それに似つかわぬ悲痛の声が……
耳に届いてきた。
恐る恐る歩みを進めて……
その、人波をかきわけていく。
「すみません、通して下さい。」
心臓の音が……やけに大きく聞こえる。
「ごめんなさい…、通して!」
不安と、
焦り。
私にはもうそれしかなくて。
必死になって…叫ぶ。
やがて見えてきたのは。
横たわって身動き一つしない……
父と。
目を堅く瞑って…何かに手を伸ばす……母の姿。
「お父さん…、お母さん!」
父の身体を…揺する。
「……ねえ…、お父さん?」
額から流れる血が…
ねっとりと私の手を濡らした。
「……あ……、ああ……」
動かない……。
動こうと……しない。
「……貴方はご家族ですか?」
近くにいた中年の男性が、声を掛けてきた。
「……娘です。」
「今、そっちから来た暴走車に跳ねられて…。救急車呼んだから間もなく着くはず……。」
「……………。」
一体。
なぜ……?
何がどうして、こんなことに……
私は手で這うようにして。
近くで仰向けになっている母へと……近づいていく。
小刻みに震える母の手を、しっかりと握る。
「………お母さん…?」
そう呼び掛けると、うっすらと瞳を開いて。
そのうつろな視界に…、
一体何をとらえていたのかはわからない。
「……わ…こ………。」
「……大丈夫、ここにいるよ。今救急車が来るから……、大丈夫。」
まるで自分に言い聞かせかのように…。
そんな言葉を…繰り返した。


