「……二人で仕事抜け出して…私を探していたんでしょう?それって…、何?私に対する罪悪感?」
これまでとは…違う。
声のトーンも、話し方も、
漂う…オーラさえ。
「……違う…、違うの、いちかさん。私は彼に聞いた訳じゃなくて…」
「『彼』ね…。しらじらしい。あの時だって…初対面の演技してたことくらい、わかってるのよ。」
「………!」
「楽しかった?…悩み聞いてくれるフリして、陰では笑っていたんでしょう?」
「ちが…」
「幸せな人。久住さんのような男性に愛されて、素知らぬ顔して火遊び…?」
「……………。」
なぜ……
言い返せないの。
「……昨日も。あの窓の外で、何をしていたのかしらね。」
「……………。」
言い返せるわけが…ないからだ…。
全てはわかっていて…してしまったのだから。
「……これから彼が迎えに来るわ。」
「…………。」
「まだ彼は…何も気づいていない。」
「…………。」
「一回の浮気くらいなら…許せる。なぜなら…、彼は絶対に私からは離れない。そう…わかっているから。」
「…………。」
「あなたも十分楽しんだんじゃない?幸せな夢を…見ていた。それで終わり。その方が…お互いに都合がいいじゃない?」
「…でも……」
「一つ、言っておくけど。」
「………!」
「人は…誰しも嘘をつくもの。貴方はまだ気づいてないの…?」
「……エ?」
「…どのみち、この先貴方が傷つくことは目に見えてる。なら…そうならないうちに、彼から手を引いて。」
「…………。」
「書き置きしたでしょう?出直すって。彼と一緒に…帰るわ。」
「…………。」
「あなたには、わからない。どんなに近くにいようと…、彼に近づくことはできない。隣りの部屋で……自分のしたことを悔いればいいわ。」
「いちかさ…」
「…もう二度と。私達に…近づかないで。」
彼女は私に携帯を押し付けて……
また、あの優しい顔で…ふわり、と笑う。
「……楽しかったわ。」
それから、目も合わせずに……
部屋を出て行った。


