「……迎えは…事務所の方が来てくれるんですか?」
「ええ。マネージャーを呼ぼうかしら。彼女に今日のこと話したいしね。」
さも嬉しそうに…彼女はふわりと笑う。
「………そうですか。」
私は心底安心して……
ホッと胸を撫で下ろした。
後は…、運を天に任せて…!
「…どうぞ。」
「ありがとう。」
彼女はそれをそっと受け取ると……
少し考えこんで、ひとつずつゆっくりと…番号を押す。
080……
「ちゃんと番号を覚えてるんですか?凄いですね。」
ピタリ。と…その手が止まる。
「…そうね、どこにいてもすぐに掛けられるように。それに……、毎日掛けてるもの。勝手に…覚えちゃったのよ。」
最後の数字、9を押して。
いちかさんの親指が…
通話ボタンを押す。
………途端に。
画面に………
『晴海』の文字…。
「あっ…。」と私が小さく声を出したのが早いか、彼女は…携帯を耳に当てる。
全くもって表情は変わってなどいない。
むしろ、口角を上げて…
幸せそうな顔。
今のは……見られてない……?
やがて……。
「………………。もしもし?」
相手……、晴海くんと思われる人物が…電話に出た。
「………ふふ…、知り合いに…携帯借りたの。」
「…………!」
「………もう帰るって言ってたから…帰るんだと思うわ。……今?〇〇ってアミューズメントメント施設。……うん、うん。………来て。……ダメ。貴方に拒否する権利はないわ。………うん、わかった。じゃあ…待ってるから。」
電話を切った後…、
彼女は、ゆっくりとゆっくりと………
私に視線を移す。
「……お人よし。『馬鹿』がつくくらいに…ね。」
いちかさんは、私の携帯を操作して……、
その画面を。
私に……見せつける。
「……。いい人ぶって、やることはえげつないのね。」
着信履歴。
晴海くんの名前が……
連なっていた。


