いちかさんの押しに負けて、すっかり遊びほうけた私は……
すでに、ヘトヘトであった。
「いい汗かいたぁ~、ねえ、マンガ喫茶もあるし…そこでひと息つかない?」
「……はい。」
疲れた体を休めたくて、ついついそう返事したのが……
間違いだった。
ジュースを持って、二人部屋へと入ると……。
その、閉ざされた空間に……
妙な緊張感が走った。
「今日は付き合ってくれてありがとうございます。」
「…いえ…、つい夢中になっちゃいましたね。体を動かすのは久しぶりだったし…楽しかったです。」
カラン…、と。
いちかさんのコップに入った氷が…音を立てた。
「………。ホント…、お人よしね。」
「…え?」
思わず…
いちかさんへと、顔を向ける。
彼女はにっこりと笑って……。
「私ね、こういう風に遊んだことってないから…今日はすごく楽しかったわ。」
「…………。」
ああ……、そうか。
いちかさんには……自由がなかった。
こんな風に遊びに出れることも…なかったのかもしれない。
「……でも…、疲れた。はしゃいだフリをするのも、貴方に笑いかけることも………。」
「……………?いちか…さん?」
ストローを掻き回しながら、彼女はふうっと……
深い息を吐く。
その大きな瞳に…陰りがさす。
「……迎えをよぶわ。」
「あ…、そうですね。もう日も暮れたし……。」
「あの……、平瀬さん。」
「ハイ?」
「携帯…貸してくれませんか?」
「…え?」
「実は貴方と話した後、電池切れちゃって…。ホラ、昨日充電しなかったし。」
「…あ…、そうですよね。いいですよ?」
私は自分の携帯を取り出して、画面を……確認する。
「…………!」
……マズい。着信が…来ている。
「あ…、ちょっと待ってくださいね。」
相手を確認すると、表示されたのは……
晴海くんの名前。
「…………。」
今、彼女に手渡して…
もしちょうど彼から着信などあったら…どうする?
「……?平瀬さん?どうしたの?」
……でも……
ここで躊躇うのもおかしい話だ。


