「…わあ、平瀬さんすごいッ!」
目の前には……
それはそれは綺麗な女優さん。
その、彼女が……
ビリヤードのキューを握り、興奮ぎみに……
ボールの行方を追う。
「…あれ、次私なの?入ったのに?」
「ええ。手玉のこの白いボールもポケットに入ってしまいましたから。プレイヤーの交代になります。」
「…なるほど。それは落としちゃいけないのね。…で、私は次、すぐ落ちそうなこのボールを狙っていいの?」
「ナインボールは番号順に落としていくので、次は…えーと、あの4番を狙ってください。…この位置から…なるべく薄めに。」
「……難しいな…。」
いちかさんはそう言って。
じっと…狙いを定める。
「……か、カッコイイ…。」
妖艶な視線。
構えるその姿は…まるで、プロハスラーのよう。
すると……、
僅かに鈍い音がして。
狙いを外したキューは手玉を数センチだけ移動させて……
それから、
いちかさんは右手をヒラヒラとひらつかせた。
「いった~い。あーあ、もうっ、平瀬さんが変なこと言うから……。」
どうやら勢い余って…、
テーブルに手をぶつけたらしい。
「痛いですよね、ソレ。私もよくやります。…ていうか…もしや動揺して?」
「………。だって、集中してたのに…嬉しいこと言ってくれちゃうんだもん。」
「……『もん』…?うわぁ…、可愛い。マズイですね、菱沼いちか。女の私でも今キュンとしました。」
「………。貴方口が上手わね。職業柄?」
「本心です。」
「…~もうっ……。」
仕事をサボって…、白昼堂々とビリヤードってどうよ?(しかも、有名人と…)
「それにしても…、バレないものですね。」
「まあね、ほぼノーメイクだし、変装はしてるし、会員証作るにも…本名全然違うからね。」
いちかさんは…なぜか誇らしそう。
でもね……、気づかれてはいないけれど、
周りの若い人…、学生さんらしき男の人達の視線を集めちゃっていますけど…?
晴海くんもそうだけど、やっぱり特別なオーラが滲みでちゃうものなのね……。


