マンションに着いて早速、私はパンプスを脱ぎ捨てて…キッチンへと走る。
「…………。」
テーブルに置かれた紙切れ。
いちかさんが残した…メッセージ。
その、内容を…朝は走り読みしていた。
私は彼女から…逃げたかったのか?
番号を控えていなかったことを、激しく後悔する。
ふと…ある一文が、目に留まる。
「………。『出直す』…?」
「……もしかして…、またここに来るってこと?」
けれど、晴海くんは彼女がいなくなったとか、探してくれとは…言わなかった。
それは、私にアクションを起こさないで欲しいということなのか、
大ごとにしたくないのか、
意図は……わからない。
「…………。」
けれど、こんな中途半端に関わって、今更知らないふりなど…できるか?
仕事を飛び出してまで、何とかしたいと…
さっきまでそう思っていたではないか。
怖じけづいては……
駄目だ。
ひとまず、いちかさんの連絡先を控えて。
それから……
電話をかける。
いちかさんにではない。
晴海くんに………。
--けれど………
耳元でコール音が鳴り続けるだけ。
留守電に切り替わるのを期待したが……それも、かなわなかった。
どうにか彼に連絡を…、と思うと同時に、木村さんの顔が…脳裏に浮かぶ。
「木村さんなら…!」
着歴を探して通話ボタンを押すその手が…躊躇する。
……駄目だ。
これ以上迷惑かける訳にもいかない。
ならば……、一体誰に…?
業界関係者ならば…彼に繋がる人が、他にもいるはず。
年々名前が増えていくアドレス帳をひたすら検索し…、ようやく最後の「わ」行に達した所で。
「……いた!」
間違いなく彼に繋がる人物へと…たどり着く。
あれはいつだったか。
晴海くんの所在を探して、この人が…私の元へと訪れたことがある。
何かわかったら、と……
連絡先を渡されていた。
「…………。」
思えばあの時の、彼…
鷲尾さんの慌てぶりは。
一体何故であったのだろう。


