ソラナミダ

「……。」


『平瀬ちゃん』…。
うん、確かにおかしい。


「【平瀬】…、なんて言うの?下の名前。」


「『わこ』!」


「『わこ』?」


「うん。平仮名で。…変わった名前でしょ。」


「…ううん、かわいい名前。平瀬さんにピッタリ。」


「…え。」


名前を誉められただけなのに、顔が紅潮する。


また、『かわいい』って言った。


でも…

言った当の本人は、呑気に笑っている。


「…ハルミくんてさ…。」


「…何?」


「…やっぱ何でもない。」


「ははっ…なんだそれ~?」


笑うと、目が細くなるんだ…。



何て言うんだろう。
この人の笑顔は、人をひきつける。


何て、『華』のある人なんだろう…。




彼は私の緊張には全く気づかない。


私のエレベーターのボタンを押す手が、僅かに震えていた。



「朝、ワイドショー見るんだっけ。」


「…うん、見るよ。」



「どのワイドショーみるの?」


「ん?『めざめテレビ』。占いみおわったらちょうど出勤時間なんだ。」


「『めざめテレビ』か…。俺もたまに見る。」


「お~、そうなんだ。これから出勤?」


「え?うん、まあ…。」


「じゃあ出勤時間も同じだったんだね。…今まで会わなかったのが不思議。」


「…。そうかもね。」




エレベーターを降りると、ハルミくんはエントランスで足を止めた。


「…じゃあ、俺迎えくるからここで。」


「…迎え?」


そういえば電話で8時って約束してた…?


「…すごいね、仕事行くのに迎え来るって。」


「そんなんじゃないよ。平瀬さんは?電車とか?」


「私は…自転車っ!」


「職場、近いんだ?」


「まあまあかな。20分位!でも通勤ラッシュに巻き込まれないし、何より気持ちいいよ。」


「…なる程。平瀬さんが言うと、楽しそうにきこえる。」


「…楽しーもん。」