「……。ごめんね、せっかく来てくれたのに…。」



「…いや、こっちこそ。毎日会ってるともの淋しくなっちゃって。」



「…………。」



「…じゃあ…、またあした。」



「うん。」




「………わこ。」




「…ん?」




「香水…、変えた?」



「…………?」



「いつもと違う香りがした。」



「…………!」



「…俺はいつもの方が好きかな。」



「そう…?」



「…じゃ…。」



「うん。また明日。」









パタンとドアがしまって……



私はその場にひとり、呆然と立ち尽くす。




「香り……?」



くんくん、と鼻をならす。




自分では……わからない。



…香水は…、変えてはいない。


朝、いつものものをほんの少しつけたきり……



何もしていない。



…てことは……、





まさか……





まさか……?!







私はぐるっと後ろを振り返る。




もしかして、晴海くんの香りが移って……?





脳裏に……



今夜、自分がとった行動を…思い浮かべる。




「……………。」





晴海くんに抱きつかれたり、


抱きついたり……



一緒に寝てたり………。





…思い当たることばかり。







「……何……してたんだろう。」






こんなの……、



友達の領域、越えている。




「…………最低…、私。」



重い足どりで…



リビングに向かう。








「…………?晴海…くん?」




ソファーに、晴海くんの姿は……




なかった。




「…晴海くん?」



辺りを見渡すが……




人の気配はない。





トイレや風呂、寝室、クローゼット……


思い当たる場所は一通り見たが……、



彼の姿はなかった。




「……風?」


ベランダの窓のカーテンが……



微かに揺れていた。





「……晴海くん!」




窓を全開に開くが……




「…いない。」




いなかった。




「……あ。」





隣りの部屋の電気が…



ついている。





もしかして、ベランダ伝いに…



帰った?





「………本っ当…、私、最低だ……。」



きっと思い切り気を遣わせた。