私は男の顔を見てみた。 初めて会ったはずなのに、 初めて、話したはずなのに。 「…そうだな」 もしかしたら、この人なのかなって。 私の大切な人。 男は、ふっと笑った。 そして、視線を別の所に移す。 「俺、さっきから気になってたんだが…。あの桜の木の根元、盛り上がっていないか」 「本当だ」 見ると、確かに膨らんでいた。 「何かあるのかもしれない。掘ってみよう」 男がそう言い、その木に近付く。 私も慌てて追いかけた。