その時…。 「…お前、ここで何をしている」 その声に振り返ると、一人の男が、眉間にしわを寄せて立っていた。 「あんたこそ…」 何となく、親の所に戻ろうとした。 しかし…。 歩き出した途端、カシャン、と、私のポケットから何かが落ちる。 「おい、落としたぞ」 男がそれを拾ってくれた。 「…ありがとう」 青い桔梗の飾りが付いた、かんざし。 私、かんざしなんて持ってきてたっけ…。