「千春。お前たくわん食べれないのか」 お父さんがそう聞いてくる。 「いや。そうじゃない」 あの人が好きな食べ物。 私の作ったものを、美味しいと言いながら食べてくれた。 あの人は今、どこにいるんだろう。 「そうか。まぁ、残さず食べなさい」 黄色いたくわんを、口に入れる。 しょっぱい味が、口いっぱいに広がった。 「…ごちそうさま」 だんだん、外の景色が変わっていく。