夢花火






あの猫が言っていたのを、ふと思い出した。



”歴史を変えようとした場合、
即刻未来へ連れ戻す“



…それに。


私がいた平成時代は、刀を持った武士もいないし、身分制度もない。

幕府も将軍もない。


つまり──。

江戸幕府は、近いうちになくなる。



戊辰戦争が来て、明治維新が来て…。
その後もいくつか戦争は起こるけど、それを乗り越え、戦争のない現在の平和な日本へと繋がっていく。



そして新選組は、もうすぐ幕臣(ばくしん)という幕府の直接の部下になるはずだ。

…だから、新選組もなくなる。

土方は、それよりも前に…。



「……」


「…千春?」


私は、土方とずっと一緒にいたい。



…せめて、土方の最期まで。



出来るだけ、長く。



「…千春」


「あ…。ごめん、何でもない」


「…そうか。変な事聞いて、悪かった」



「いや、大丈夫」



もう、この事は気にしないように笑顔を作ってみせる。



「土方は、どんな未来が待っていても、気持ちは変わらないだろう」




そう聞くと、土方は口端を上げる。




「当たり前だ。俺は、自分の未来がどんなものであっても…。近藤さんに尽くす」





予想通りの答えが帰ってきて、ほっとした。