コソコソと、屯所の中を歩いていく。
…どこに隠れよう。
歩いていると、遠くに土方の姿が見えた。
サッと、影に隠れる。
「千春を見なかったか」
土方の、そんな声が聞こえた。
やばい…
早く隠れないと。
「千春さんなら、さっきあちらの方を歩いてましたよ」
「…そうか」
足音が近付いてくる。
私はすぐに、近くの部屋に入った。
中で本を読んでいた斎藤が、驚いた顔で私を見る。
「すまない、斎藤。もし土方に私の事を聞かれたら、知らないって言ってくれ」
斎藤が返事をする前に、押し入れに入り、じっと息を潜めた。

