少しだけ、山南の事が心配に思った。 …ずっと、複雑そうな顔をしていた。 もうすぐ咲きそうな桜の木を眺めていると、後ろに人の気配がして、ぱっと振り向く。 にこやかな笑みを浮かべた伊東が、私の所まで来た。 「松林千春さん…でしたよね」 そう言いながら、私の隣に座った。 「…何の用だ」 何となく、今は一人でいたかった。 用があるのなら、さっさと済ませてほしい。 「いえ、特に。一度あなたと、お話したいと思っていたんです」