「ありがとう。」



 大場さんが笑顔を向けるが、その顔はとても弱々しく見えた。



 遠くからどこかで聞いたことがある、洋楽が聞こえる。



 おそらく後夜祭のBGMだろう・・・。



 実行委員会の司会がマイクで何かを言っているが、ここからでは聞き取れなかった・・・。



 ポケットの中で自分の携帯が震えている。



 震え方からして電話だということが分かる・・・。



 後夜祭に出ていない自分を誰かが探しているのだろう。



 ・・・・・・・・だけど、今は出れない。



 望巳はポケットの中に手を入れると、静かに携帯の電源を切った。