「こんにちわ」

 背後から声をかけられて、振り返る。

 声の主は、穂波と同じ、制服らしきグリーンの立て襟シャツに、黒のタブリエ姿の女性だった。

 年齢は三十代後半。目尻に笑いしわが刻まれていて、それが逆にあだっぽい。

 顔立ちも整っているけれど、雰囲気が独特な女性。

 視線が合うと、彼女は一瞬――ほんの一瞬、表情を曇らせた。

 『あれ?』と違和感を覚えたのも、やっぱり一瞬。

 すぐに彼女は、淡い笑みを浮かべたから。