「いいカフェを知ってるんです。ほらほらココ! よさそうでしょ!」

 ぐいぐいと押し売りに近いノリで差し出されたのは、よく店のカウンターに置いてある、名刺サイズのショップカードだった。

 濃い緑に、金の箔押で【Augasta】。

 裏返すと、手描きっぽいタッチで地図と住所が入っている。

 カードだけならシンプルで悪くないけれど、これだけで良い良い連呼されても、ワケがわからない。

「明日、11時にココで! よろしくお願いします!」

 反論を許さない強引さで、穂波がつめよる。

「……よろしくお願いされます」

 ついついうなずいてしまうのは、負け癖の一種かもしれない。

 俺は、ちょっと複雑な心地になった。