涼は両手をズボンのポケットにつっこんだまま、灰色の海がうねるのを眺めていた。 顔を綺樹の背中へと向ける。 「綺樹。 好きだ」 綺樹は立ち止まらなかった。 海風が言葉をさらってしまったのかもしれない。 その時、足を止めて肩ごしに振り返った。