「行った?」

「どこに?」

「実家」


ちらりと視線を投げた。


「いーや」

「ふうん」


綺樹はじろじろと涼を眺める。


「なんで?」

「おまえが、スペインの家を継がないのと、似ていると思うけど」


綺樹はふいっと顔をそらせた。


「違うね」


少し首を傾げてから苦笑を浮べた。


「同じか」


綺樹は両足をクロスさせて、抱え込んだ。


「そうだな。
 無理強いはできないな。
 ただ、一つだけ言えることは、手に入れられる可能性が増える」


涼はカップを揺らして、中身がもったりと揺れるのを眺めていた。