『戦うのが怖いだけでしょ?』
雨希は、そう言いながら紅に向かってトランプを投げる。
亜季の目の前を通り過ぎていくトランプは、風を切って一直線に飛ぶ。
が、紅の後ろでトランプは一時停止した。
ハラリ、間を置いてトランプが真っ二つになって舞い落ちた。
何が起こったのか分からず、MURDER側の人間は互いに顔を見合わせるばかり。
『…怖いですよ、戦いは。
人の中に棲む悪魔が、本来の自分を喰らいますから…。』
カチャリ、剣をしまう音がした。
「今の…」
『あの女が斬ったのか…?』
強靭なスピード。
軌跡さえ目に見えない。
しかし、なんと優雅な…
風が、ふわりと吹いただけ。


