アジトである古城に戻り、凪は噴水の縁に座った。
『凪、怪我をしたと聞きました。』
美しい声の主が、私を呼ぶ。
『この程度の傷など、かすり傷です。』
『…ふふ、貴女はいつも、二人きりになると丁寧な言葉遣いで話すのですね。
そんなにかしこまらなくても良いのですよ。』
柔らかく、紅は笑う。
『いえ、私は貴女様に忠誠を誓ったのです。…どんなことがあろうとも、私の主は紅様です。』
ふわり、風が吹く。
『…髪を、斬られたのですね。』
『、申し訳ありません…!』
凪の顔が青ざめる。
『…いいえ、そのままでは不格好です。お切りなさい。』
『…はい。』
ニコ、微笑んで、紅は古城の中に入っていった。
その姿が見えなくなるまで、凪は静かに紅を見つめていた。


