『紅が女になれば、間違いなくあたし達は負けるわ…。』
独り言のように、凪は言葉を落とす。
それに晴樹はすぐに反応した。
凪を見つめる。
『BANISHが成り立っているのは、全ての人間の男女という概念を一切排除したからよ。
…互いを男、女と認識しない。すなわち恋愛感情を持たない。
誰かを守らなければならないというしがらみの無い人間は、自分だけを守ればいい。自分のことだけを考えて戦えばいいの。』
『…何が言いたい?』
煩わしそうに晴樹が言う。
そんな晴樹を真っ直ぐに見つめ、凪は静かに口を開いた。
『愛する存在を持つと、必ず人間は弱くなる。それが例え、手に入らない存在だとしても。』
…ゴクリ、生唾を飲む音が聞こえる。
凪は静かに目を閉じて、ゆっくりと立ち上がった。
『優しい人間は、いつだって早死にするものよ。』
そう言って、凪は腕に巻かれた包帯を柔らかく撫でながらその場を後にした。


