禁断の姉弟愛 ~欺くのはどっち?~

「自慢するわけじゃないんですけど……」


 そう言いながら小柳君はポケットから名刺入れを出し、中から1枚引き抜いて私にくれた。


「あ、ありがとう……」


 と言って私がそれを受け取ると、


「小柳、姉貴にだけってないだろ? 俺にも見せろよ」


 横から和也がその名刺に向かって手を伸ばした。すると小柳君は素早い動作で和也の手を遮り、「おまえにも渡すって……」と言いつつ、


「早く仕舞ってください」


 と、私の耳に顔を近付け、小声で囁いた。私は、何か変だなと思いながらも、言われた通り、受け取った名刺を見もせずに財布へ仕舞った。


 そして、和也や近くの子達が小柳君の名刺を覗き込み、「へえー、開発部門の営業かぁ。大変そうだな」なんて話をしている時、小柳君は再度私の耳元で、


「後で裏を見てください」


 と囁いた。