「近くじゃドライブにならないから、少し遠くの水族館に行くよ?」


 和也はカーナビを操作しながらそう言った。


「うん、いいよ。どうせ明日も休みだし」


 望むところだわ。それだけ長く和也といられるのだから。


 行き先をセットし終えると、和也は車を静かに発進させた。しばらく走ってから、そろそろ言ってみようかな、と私は思った。うまく行くと良いのだけど……


「ねえ、和也……。姉弟でドライブって、ダサくない?」


「今更そんな事言うなよ。引き返そうか?」


「ううん、そうじゃなくてさ、せっかくなんだから、気分を盛り上げない?」


「気分?」


「そう。つまりその……デートしてる気分に」


「デート? 俺と姉貴がか?」


「うん。今日は私達が姉弟って事は忘れて、恋人同士って事にするの。言ってみれば“恋人ごっこ”ね。してみない?」