和也は予め車のエンジンを駆けてくれていて、助手席に滑り込むように乗り込んだ車内は、程よくエアコンが効いていた。


「姉貴、どこ行く?」


 運転席に乗り込んだ和也が私を見て言った。


「どこでもいいわ」


 私はわざと気のない返事をした。


「じゃあ、海に行こうか?」


「えー、海? 水着持ってないし、風がベタつくからイヤー」


「じゃあ、山は?」


「山? 山道は疲れるからイヤー」


「どこでもいいって、言ったじゃんかよ?」


「だって……」


 我ながらバカみたいだけど、我が儘なブリッコを演じてみた。ちょっと怒った和也が見たくて。