禁断の姉弟愛 ~欺くのはどっち?~

「あんまり親に心配かけんなよな?」


 和也は前を向いたまま、ボソッとそう呟いた。


 心配、か……

 私は左手の腕時計に目を落とした。それを少しずらすと、現れるのはみみずばれの醜い傷跡。


 あの時の事を思い出し、背筋に悪寒が走った。2年ほど前のある夜、私はお風呂で手首を切った。剃刀を見て、衝動的だった。あの時の痛みと、遠のく意識の中で感じた死への恐怖は、おそらく一生忘れる事はないだろう。


「姉貴、聞いてる?」


 和也の声に、私は慌てて手首を隠したけど、和也にチラッとそれを見られてしまった。


「き、聞いてるよ。面目もございません」


「チッ。ふざけてる場合かよ?」