もう1つ、小さい箱を開ける。
キラキラと輝く、シルバーの指輪が顔を出した。
これは確か、かなり前。雑誌を見てた時に、
『…あっ。いいなこれ』
とか何とか呟いただけ。 それを綾は覚えてた?
それにこれ、結構高かった気がする。綾、自分のお金だって書いてあったな…。
そういえば、休日に綾が一人で、度々出掛けた事があった。
『どこ行くの?』って聞いても、『ヘヘッ。ナイショ』と教えてくれなかった。
もしかしてあれは、このお金を稼ぐために働きに行ってたのだろうか。
どれだけ大変だった?どれだけ苦労した?
綾、お前さ……馬鹿だろ?
俺のためじゃなくて、自分のために金使えよ。
こんな優しくもない、構ってもあげられない旦那に、ここまで尽くしてくれんのお前だけだって。