紫音が話し終わった頃には紫華の深刻な表情が目立ってきた。
そうして先程使い物にならなくなってしまった竹刀を置き、紫華は紫音の目の前に座った。
「紫音、ずっと言っていなかったけれど、櫻澤家と家《うち》藤岡家は対極関係にあるの。
苗字と今日あなたが体験した出来事の当事者となったことから分かるわね、彼が櫻澤の人間だということを。
櫻澤と藤岡の関係は紫音自身が調べるべきことだから私は言えないけど……。
恐らく彼が今日貴女とのすれ違い時に口にした言葉は言霊。貴女の中にずっと残させるために口にした戒めだと思うわ。
『俺のように』というのは、櫻澤のようになってはという意味だと思う。多分、櫻澤と藤岡の関係を調べたらおのずとも見えてくるからこれも私からは言わない。
今日はもういいわ。全部書庫にあると思うから自分で探して調べなさい」
紫華はその言葉と共に後ろを向く。どうやらこれから道場を出て、練習を放棄することを許してくれるようだ。
紫音は紫華には見えていないであろうが、会釈程度のお辞儀をし、道場を出た。
