藤岡紫音は思案にふけっていた。


彼女の中にあるのは櫻澤結斗が去り際に言った一言。


『俺のようになっては駄目だよ、紫音』だ。


紫音にはその意味が分からなかった。またなぜ苗字で呼んでいた相手がわざわざ名で呼んだ理由も。


別に忘れても構わないかもしれない言葉は彼女の心と頭の中で駆け廻り忘れさせてくれない。だから紫音は尚更気になる。


あの言葉にはいったい何の意味があるのか。












バンッ。


と紫音を元の世界へ戻す音がした。