「あんなこと言ってよかったの、結斗様」
いつのまにやら校門を潜り、学校を出た結斗と静寂はともに歩調を合わせ、歩いていた。その様はまるで恋人のよう。とはいっても彼らは恋人ではなく幼馴染という肩書なのだが。
「いいんだよ。あれくらいならね。どうせそんなことにはならないと思うしね」
「ふ~ん」
あまり納得した風情のない静寂の頭を結斗はひたすらに撫でまわす。
「全く。
静寂は少し嫉妬してたんだね。
まぁ、俺もだけど。
そりゃぁ、何も知らないまま成長した上に彼女はあやかしを救う側にいる。今までの平穏も優しさを崩さなくて済む。
だけど櫻澤の一族に生まれたら日常も得ることもできないし、優しさを抱くことはできないからね。少し羨ましいよ」
「私は別にこれで構わないと思うよ、結斗様。
例え日常での優しさが欺瞞や嘘に包まれているとしても。私はその中に結斗様の本当の優しさと冷酷で残虐な姿が隠れてるの知ってるからさ」
「そっ」
