今結斗様の眼に映っている中に結斗様の兄紅華様を表す華色の花弁が1枚、2枚と日を増すごとに増加している。結斗様はそれを眺めどう思っているのだろう。
時が迫っていることをひしひしと感じ、覚悟の炎を灯しているのだろうか。花弁と兄紅華様を重ね合わせ感じてしまう何らかの感情を押し込めようとしているのだろうか。
私には分からない。分かりようのないことだ。私と結斗様の間にはそれくらいの差がある。これからもずっと変わりようがない差。それでも自分には言わねばならぬことがある。それを放つために口を開いた。
「私達は…櫻澤家分家はやはり認めるわけにはいかない。それでも結斗様が必要としているのなら、仕方ないこと、そうは思っている。でも私達は、藤岡家の者が櫻澤の者が櫻澤本家祖先に行ったしでかしを許せずにいるということを忘れないで。
私は当主様も、結斗様も好きで尊敬しているからこそ、藤岡家人間へ嫌悪感を抱いることを覚えておいて」
