「……そう…だったの。
今頃という感じであるかもしれないけど、私は結斗君とてつもなく好きだったのよ。これは恋慕というわけではないんだけどね。とても良い子だったから。頭脳も人並みに持つ賢い子で…あの頃の私にとっては怖さがあったけど、それをひけらかさない顕著さは好意を抱いていたわ。
それとね……好きだったの、紅華さん。年が離れていたのだけどね。そう……紅華さんは妖に……、あの人誰よりも心が脆い人だったものね。ずっと気になってはいたの。紅華さん見かけないから。家を出たとは聞いたけどね、姿を見かけなかったら。
それより紫音はどうするの?」
きっと結斗君の手伝いのことだろう。先程までとは違う、儚げで切なげな表情を浮かべる姉。
その姉は私に優しげに問いかけてきた。正直まだ悩んでいる。本当に手伝うべきであろうか。
「もう俺とは関わらないほうが良いと思う」という言葉が自分の頭の中に残っている。だからだろう。助けたいという気持ちとは裏腹に協力しては駄目だと、助けなくても良いという歯止めがかかるのは。それに自分はまだまだ弱い。結斗君の助けに慣れるはずもないと、思っているのだ。そう話した。目の前にいる姉に。そうすると納得した風情をだし、私の手を握った。
