気付けば、見慣れた屋敷のとある部屋にいた。
一番に目に入ったのは兄の顔。優しげな面差しを浮かべた兄。
あの頃はいつもこの兄の表情に支えられた。そんな兄のことが大好きでたまらなかったことを未だに覚えている。そんな兄の表情に安堵を覚えると同時に罪悪感が押し寄せて来た。またも兄に負担をかけてしまったと。
あのような大量の陰の気を体内に入れれば、人間何が起こるか分からない。否、分かる。妖と成り変わるのだ。恐ろしく知恵のつく厄介な妖と。もう人間として目を覚ますことなどないはずなのだ。
ただそれを免れることができる方法があった。それは癒しの能力がある兄に能力を使ってもらうこと。さすれば兄の中に陰の気が溶け込まれることはあるが、自分より耐性のある兄には負担とはならない。
だから毎回兄に助けてもらう。その時はいつも笑みを浮かべる、兄に礼を言うのだ。同時に謝罪も。なのだが……。
