薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~






「結斗様っ」



本家邸へ到着すると、血相を変えた静寂が現れた。


額には汗となった雫が現れている。それほどまでに心配し、探してくれたということだろう。有り難い。


だがこうして無事に帰ってきたのだから、泣かないでほしい。護衛の静寂に泣かれては、どう声をかければよいか分からぬではないか。彼女が流す一滴一滴に思いがこもっているのは分かるが、男というのはそういう涙に弱いのだ。


だから泣き止んでほしい。そう思いながら、同い年である彼女の頭を何度も何度も撫でた。



「静寂、これから稽古するから付き合ってくれる?

 静寂以外に付き合える相手いないからさ。それに秋に行かなければならないところもできたし、それまでに強くならなければならない」