薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~



そもそも理由がどうであれ、1度入った櫻澤家から出て行った人。


そんなものと同じ空間を過ごしたなど、御爺様に申し訳ない。そして櫻澤家の者にも申し訳ない。きっと静寂だって怒るだろう。


早く帰らねば。その前に俺に怪我を負わせた妖がいた場所へ行って、調べねば。きっとあの妖は俺が探す奴と関係している。だから一刻も早く、行かねば。



「だから駄目よ」



またも止められた。何故彼女は自分がやろうとしたことを真っ向から否定してくるのだろう。彼女だって俺に付き合う暇などないはずなのに、どうして構ってくるのだろう。早く仕事へ戻ればよいのに。