薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~




憎々しげに吐き捨て、身を起こそうとすると制する細い腕。筋肉など少量しかないだろう。


それなのに自分の身体がいうことを聞かない、彼女の腕が起こさせてくれないのだ。



「動いては駄目よ。せっかく治した傷が開いてしまう。

 私は傷を癒せるけど、こんなに酷い傷では私も癒せない、血を止めることしかできないことくらい知っているでしょう。

 だから大人しくしておきなさい。

 別に敵じゃなくて実の母なんだから、警戒も解いて良いのよ」



そう。この人は俺の母親。幼い頃に父を追いかけるようにして去っていた母。


名を櫻澤雨卯《さくらさわふるう》。本家を出てからは櫻藤《さくらつ》雨卯と名乗り、俺が所属する学園の運営をしている。