「私は駄目ね。結斗に釣り合わないくらい、駄目な母親。

 きっと貴方は逞しいほど成長を遂げるだろうけど、私はもう無理ね。

 そんな貴方とは一緒にいてはならない。

 だから今日で貴方を撫でるのは最後。貴方に触れるのも、褒めるのも、貴方の声を聞くのも、顔を見るのも最後。さようならよ。元気でね、結斗」



そう言って、母は自分勝手に離れて行った。きっと理由があったのだろう。


けれど母が姿を消したせいで、たくさんたくさん傷付いた。あの頃の俺はまだまだ無垢で純粋だったから。時期があの頃ではなく今だったら、傷付くことなどなかっただろうに。


どちらにしろ別に構わないことだ。正直どうでも良い。時が遅かろうと早かろうと母は家から出て行くことは決まっていただろうから。



そうだ。別に構わないのだ。母が本家から立ち去ろうと、父が御爺様の傍を離れようと、兄の心が壊れようと、構わないのだ。俺は俺なのだから。