冗談には聞こえない。
彼女の双眸は肉食獣が何か食らうかのように感じる。
体全体から殺気を放つ。これは妖に向けての、ではない。確実に私に向けて放っている。
そこには櫻澤君に届けてほしいと言った時の彼女はいない。
恐い。それだけにつきた。なんでこんなに恐いだろう。
恐ろしさを抱いたせいであろう、一歩一歩後退ってしまう。それでも逃げられない。否、逃げたくないのだ。だから数歩後退った後で足を無理矢理止める。
「な、ぜ、そんな……ことを…いう…の」
「それは貴女のことが嫌いだから。羨ましいから。疎ましいから」
